受粉をさせるために他家受粉が必要なブルーベリー。
もし庭で育てている品種のブルーベリーを増やすことができれば、それだけ花粉の採取量も増えて、受粉する確率が高まります。
ということでブルーベリーを増やしたい!と考えましたが「苗をたくさん買ってくる」というのは経済的ではありません。
なので今回は挿し木という方法を使ってブルーベリーを増やす方法をご紹介します。
また「挿し木をしたけど葉や枝が茶色くなって枯れてしまう」といった方も参考にされてみてください。
そもそも挿し木とは?
挿し木とは、その植物の枝などの根が生えていない一部分を切り取って(挿し穂)そのまま土に植えることで再度成長させるという、いかにも人工的な増殖方法のことを言います。
実際の挿し木の様子。
挿し木の方法については、後半でご紹介します。
また、ブルーベリーを種から育てた場合は、交配させた親のDNAを受け継ぐので(人間でいう子供)別の品種が生まれますが、挿し木の場合は同じDNAをもつクローンということになります。
挿し木の利用目的は?
単純にブルーベリーの樹を増やすということ以外にも、人工授粉時における花粉製造用として利用できます。
例えばブルーベリーが3品種あるとして、この中の1品種を挿し木で増やしたとします。
増やしたブルーベリーは他2品種のために花粉採取専用とし、他2品種の花粉は、挿し木元の樹に人工授粉をすることができます。
つまりは、花粉が多く取れることによって受粉の可能性を上げるという目的でも挿し木は有効なのです。
ただ挿し木元の樹(クローン元)と、挿し木した樹(クローン)ではDNAが同じなので他家受粉にはなりません。
あくまで別のブルーベリーの樹へ受粉させる必要があることを覚えておいてください。
ちなみに花粉採取用のブルーベリーにする場合は、大きく育てる必要もないので小さめの鉢でも大丈夫です。
新築住宅の庭でも十分管理できますよ。
挿し木を行う時期は?
一般的には植物の成長期に入るタイミングが良いとされていて、そのほうが切り取った個所のからの発根も早くなります。
ただ挿し木は環境が整っていれば、時間のかかり具合は変わってきますがいつでもできるようです。
家庭菜園の場合は、湿度が上がって、高温になり過ぎない5月~6月が挿し木の成功率が高くなるのでおすすめです。
挿し木の準備
まずはブルーベリーの植え付け時と同様に、ピートモスと鹿沼土を用意します。
鹿沼土は通気性を与える程度で問題ありません。
ピートモスをバケツなどの容器に入れた後、水を入れて十分に給水させておきます。
ここで上手に発芽させるための一工夫。
少しでも発芽率を高めるためにスーパーミックスAという培養土を使用すると、挿し木が上手くいきやすいです。
サカタのタネが販売するスーパーミックスAは、良質なドイツ産の黒ピートを使用している、高級培養土となります。
通常のピートモスは地層表面の堆積層が使用されることが多いですが、スーパーミックスAに含まれる「黒ピート」は8000年以上前という深い地層から掘り起こされた希少な土で、フミン酸と呼ばれる物質が多く配合されています。
フミン酸は優れた保湿性をもち植物の根張りを促進し、土壌の団粒化もしてくれるなど、様々な良い特徴があり、ブルーベリーの挿し木には最適な土となります。
このフミン酸が配合されたスーパーミックスAを挿し木時の土として使うことで、発芽、根張り、株張り、花付きすべてが変わってきます。
採掘・製造もドイツで行われ、培養土でありながらロット管理されているという高い品質管理。
育苗だけでなく、ブルーベリーの土作り・畑の土壌改良にも最適です。
土の用意ができたら、次は土を入れる鉢やプラスチック箱などを用意しましょう。
現状は挿し穂が刺せれば、鉢でもポットでもなんでも大丈夫です。
用意する挿し穂は、当然元気のよいものが理想です。
5月~6月ごろ、その年に伸びてきた枝を切り落とします。
今回はこちらのブルーベリーの植え付け記事で冬に植えたティフブルーの新枝を切り落としました。
切りそろえたら、上から数えて2枚だけ葉を残し、余分な葉は水分の蒸発を促してしまうので落としてしまいます。
そして水を吸える面積を増やし、吸水しやすくしてあげるために、枝の下側をカッターで斜めにカットします。
両サイドから角度を変えて切ってあげると吸水が良くなります。
この枝をこのまま2~3時間程度、水につけておきます。(水あげ)
挿し木の方法
上記で用意した土と鉢に、ブルーベリーの挿し穂を2~3cmの深さで挿して、湿度の高い場所に置いておきます。
屋外で問題ありませんが、直射日光を浴びる場所や、乾燥してしまう場所・高温になる場所はNGです。
成功率を高めるためには
発根促進剤ルートンという商品があります。これを使うと劇的に発芽率が高くなります。
が、食用作物には使用してはいけません。
つまり食べるためのブルーベリーには使用禁止です。
ちゃんとメーカーが明記していますので、間違ったサイトの情報にはくれぐれもご注意ください。
ルートンはホルモン剤なので、生理現象など色々な影響があるのでしょう。
ただ観賞用である場合や、ブルーベリーを収穫しないということであれば使用しても問題ありません。
ブルーベリーの挿し木をしてみたけど、すぐに葉が枯れてしまう…枝が茶色くなってしまう…などなど、私も数多くの失敗を経験しました。
なんとか、このような失敗をせずに挿し木の成功率をあげたいという場合には、やはり挿し穂をしっかりと選ぶということと、乾燥をさせないこと、これにつきます。
その挿し穂は今年に伸びた枝ですか?暑くなる場所に置いていませんか?1日2回の水やりをしていますか?
この3点が失敗要因ですので、確認してみましょう。
ちなみに、乾燥を防ぐためにポットごと全体をビニールで覆ってしまうという方法があります。
私が個人的に編み出した挿し木方法なのですが、かなり発芽率は良いです。
上の写真で挿し木した鉢をご覧いただいたと思いますが、その鉢に白いビニール袋を被せてしまいます。
こんな感じに、空気穴も少しだけ開けます。
こうすると、白いビニールが直射日光を遮り、土中の水分の蒸発を防ぎ、さらに空間湿度が高い状態で保たれます。
安あがりで、効果の高い挿し木方法です。
さらに挿し木の成功率を高めたい場合は、土を挿し木専用の土にすることも効果があります。
上記の土にピートモスを混ぜ、pHを酸性に寄せてからお試しください。
挿し木のコツは、下記の検証実験で解説!
挿し木に適した肥料を観察実験
今回挿し穂を採取した時に多く採れすぎてしまったので、どんな土が挿し木に向いているのかを検証実験してみることにしました。
別々の土と、様々な肥料も使用して、挿し木の成長具合を比較してみます。
写真の左から、
ピートモスと鹿沼土に天然植物活力液「HB-101」という100%自然由来の液体肥料を与えたもの
ピートモスと鹿沼土に「ブルーベリーの肥料」を混ぜ込んだもの
ピートモスと鹿沼土に「化成肥料」を混ぜ込んだもの
普通の土に「ブルーベリーの肥料」を混ぜ込んだもの
普通の土に「肥料なし」のもの
となります。
水やりの回数、日当たり、温度などの条件は全て同じです。
実験1日目、もちろん植えたそのままです。
実験2日目。
なんと、早くもブルーベリーの肥料と化成肥料を与えたポットの葉が枯れ始めてきました。
肥料による栄養分は悪影響を及ぼすのでしょうか!?
実験5日目。
ブルーベリーの肥料と化成肥料を与えたポットは、全て落葉。
枝も茶色くなってきています。
まだ結論には早いですが、どうやら挿し木に調整肥料を与えるのは良くないようです。
実験7日目。
残念ながら、調整肥料組はすべて茶色く枯れてしまったので、ここでリタイアとなりました。
すべて土から抜いてみると、枝が茶色く変色し、枯れてしまっていました。
条件が整っていないと、すぐに枯れてしまうんですね。
一方で、意外と元気な肥料なしのポット、少し葉に傷が入ったところが枯れているのと、全体的に少し葉が黄色いかな?という状態。
HB-101を与えているポットは、葉の色もよく、健康そのものです。
奥に見えるのは、枝の先端部分を挿し穂にしたものです。少し葉が丸まっているので、まだ葉が若すぎたのかもしれません。
この後、2本とも順調に根付き新芽を確認しました。
実験結果としては、化成肥料など元肥は挿し木には向かない。
自然肥料であるHB-101は挿し木にも有効で、効果があるということがわかりました。
さらに土が極端にアルカリ性でなければ普通の土でも挿し木は可能、という結論に至りました。
挿し木の確立を上げたかったり、健康に育てたいと言う場合には、HB-101はかなり有効でしょう。
今回は外気にむき出しで実験しましたが、上記でも述べたように、天然植物活力液「HB-101」とビニールなどの保湿対策を行えば、ブルーベリーの挿し木は簡単に成功できると思います。